工房ARTIGIANOのusuhaを買いました

カードと小銭が重ならない新しい構造の財布「usuha」をクラウドファンディングを通じて購入しました。

ここ最近になって「小銭とカードを重ねない構造」の財布があちこちのメーカーから発表されています。
アブラサス薄い財布がパイオニアとして世に出てから久しく唯一無二(?)であったはずの構造の財布。
確かに「小銭とカードを重ねない構造」が、財布を薄く作り上げる方法の最適解と言えるのかもしれませんが…。
いつの間にやらミニ財布の流行に乗じた単なる模倣品までが市場へ出回るようになりつつあります。

しかしながら「創造は模倣から始まる」とはよく言ったもので、より洗練されたオリジナリティを付加した財布も同時に散見されるようになりました。
0から1を創り出すオリジナルが偉大なのは当然として、1から2、2から3をとばして4へと発展させるクリエイティビティも尊敬に値します。
さて、このusuhaは他の類似構造の財布と比べてどんな創造性・独自性を秘めているのか。まずは恒例のサイズ測定によって比較していきます。

上記右側の測定画像については、最も厚みが出るであろうコインポケット部分を含めた財布のマチの厚さを測定した数値です。
コインポケット部分は他の部分より2~3mm程度厚みが増すようですね。

製品名測定画像短辺長辺マチ収納時
マチ
面積体積収納時
体積
百円玉
限界容量
artigianoのusuha8.88.90.81.278.362.694.023
SYRINXのHitoe Fold9.39.50.81.188.470.797.243
OUT OF ORDINARYのTIME8.99.50.61.184.650.893.124
アブラサスの薄い財布9.69.80.91.294.184.7112.916
HUKUROのJITAN9.912.10.60.9119.871.9107.838
エムピウのピアストラ10.010.30.91.3103.092.7133.930

このusuhaは、比較対象となる類似構造の財布の中では最も面積が小さくなります。
小銭とカードを並行配置する都合上どうしても短辺長辺は大きくなりがちなのに、そのギリギリをついてコンパクト化に成功したというのでしょうか。
usuhaはコインポケットに割くスペースを非常に小さく割り振っているので、それがコンパクト化の要因と思われます。
そのコインポケットまわりの工夫がちょっとした癖の強さをもたらすことになるのですが、詳しくは後述します。

なお、札室部分の革1枚の厚みを測定したところ、下記画像のとおり0.7mmという結果に。
他の類似構造の財布が1.4mm~2.5mm厚の革で構成されているのに対して、ダントツの薄さ!

この薄さで革財布としての質を損なっていないのは、ブッテーロという革の特性か、それとも作り手の腕前によるものなのか。

> usuhaでは薄い革で製作して薄い作りにこだわっています。
> 薄い革での製作ではまず問題となってくるのは強度問題。
> 今回も色々な革の色々な厚みで試作をした上でブッテーロが1番薄く強度が取れるという結論に至りました。
> この革は特に表層付近の強度が別段に強く繊維の密度が高いんです。

usuhaのカードの使い勝手について

この財布の大きな特徴の1つが、ベロ引き出し方式のカードポケットです。

5~9枚程度が収納可能なカードポケットは、普通に指でカードを摘まんで取り出すような仕組みではありません。
このベロを引き出すことで、カードポケットの底からすべてのカードを引っ張り上げて取り出す仕組みとなっています。

似たような仕組みを採用した財布は他にもいくつかありますが、それらと比べてこのカードポケットが優れているのはその向きと位置関係。
カードポケット開口部が、財布が閉じられた状態でも外向きに開かれているので、財布を閉じたまま目的のカードを簡単に取り出すことができます。
これはかなり便利!

通常このような開口部の大きいカードポケットは、適切なカード収納枚数を超えると革が伸びきってカードがこぼれるリスクがあります。
しかしusuhaはもう1つのベロをストッパーに用い、開口部に引っかけることでカードポケットに蓋をすることができます。

これは中々にありそうでなかった発想と言えるかもしれません。
この工夫によってカードポケットの機能性は抜きん出たものとなっていますが……ただ非常に残念なのがその見た目。
財布を閉じた状態でもこのベロが常に財布からちょこんと飛び出しているため、そこはかとない残念感が漂っているように感じてしまいます。

このベロさえなければ薄いブッテーロの革質もあいまって高級感を演出することもできたでしょうが…。
個人的には何だか子供っぽい雰囲気と言うか、財布をファッションアイテムの一種と考える方の中には抵抗を感じる人もいるのではないでしょうか。

ついでにもう1つ。財布の留め具となるホックの位置が中心寄りにあるため、財布を閉じた状態では端の方が外側にはねてしまうんですね。
これについてもあまり見栄えがよくないというか、気になる人は気になるところだと思います。

usuhaの小銭の使い勝手

突き詰められたスペースの中でカードポケットと平行配置されたコインポケットは非常に底が浅く、蓋もありません。

あまりに底が浅いため、5百円玉なんかは収まりきらず頭が飛び出てしまってるレベルです。

ホックにより財布が閉じられた状態であれば、折りたたまれた財布の内装自体が蓋の役目を果たすので、小銭がこぼれるようなことはありません。
ただ財布内装に直接小銭との摩擦が生じてしまうおかげで、内装部分に傷と汚れが生じるのは避けられない模様です。

コインポケットにはある程度マチが設けられているものの収納量は少なめ。
コインポケットに直接小銭を放り込もうとしても、このコインポケット形状の宿命なのか、小銭を入れにくくこぼしてしまうリスクが付きまといます。

そこでこのusuhaは、コインポケット以外にも「小銭の受け皿」を設けるというアイデアを採用しています。


コインポケットから受け皿へ直接小銭を滑り込ませることで、平面スペースに小銭を広げることができるため、良好な視認性を確保できます。

その逆の動作を行うことで、受け皿に放り込んだ小銭をコインポケットに滑り込ませることができるというのですが……実際にやってみました。


滑らせた小銭の一部が上手くコインポケットに収まってないですね…。
何回かやってみましたが、小銭の枚数が少なければスムーズに収まる場合もあるものの、小銭枚数が多くなるとダメみたいです…。

コインポケットのマチが狭いせいで縦方向に小銭が重なってしまい、スムーズなポケットインが難しくなってしまうようです。
この状態で財布を振ると小銭が零れ落ちるリスクがあるので、指でならして小銭をコインポケットに収める必要がありました。

usuhaの紙幣の使い勝手

札室内部は革(ブッテーロ)の床面となっています。しっかり磨かれているためか摩擦による引っかかりは感じられず、スムーズに紙幣を出し入れできます。

短辺を小さく作っているせいか、万札を収納する際は若干窮屈さを感じる気もしますが、ストレスを感じるほどではなく個人的には許容範囲。
カードストッパーのベロに紙幣が引っかかることもあるようですが、通常の使い方をする上で支障はないでしょう。

札室の内側の革は端が縫われておらず可動式になっています。これによって小銭受け皿として利用する際の視認性を確保していると考えられます。

それでは、紙幣については普通の2つ折り財布と同様に使っていけるのかと思いきや、ここにちょっとした「癖」が生じます。
札室の中に入った紙幣を確認しようと、札室開口部を上に向けて財布を傾けた場合……この時に小銭がこぼれるリスクが生じてしまうのです。


コインポケットに蓋がないため、少し財布を傾けるだけで小銭が滑り落ちてしまいます。
かと言って財布を傾けずに札室に入った紙幣を確認するのは現実的ではありませんね。

こうなってしまうのを防ぐために、紙幣を出し入れするときは必ず財布を縦にして持つ必要があります。
小銭受け皿を利用する時は財布を横に、紙幣を出し入れするときは財布を縦にして使い分ける必要がある訳ですね。
あるいは財布を持った掌でコインポケットを押しつぶす方法でも小銭の落下を防げるかもしれません。

この使い分けが苦になる人ならない人の個人差は結構大きいんじゃないかと想像してます。
財布を縦持ちしていても、小銭の収納量や財布の扱い方によっては、浅いコインポケットから小銭が飛び出しそうになることも多々ありそうです。

使用者に「慣れ」を要求する財布かもしれないが、それが向いてる人にはピッタリマッチする財布かも

類似構造を持つ他の財布と比較して、最も小さい財布であることは間違いありません。
カードの使い勝手は抜群。紙幣や小銭の扱い、それに外観にも強い癖があるものの、癖が合う人にはとても使いやすい財布ではないかと思います。

またこのusuhaは、製作者が大阪に構える工房artigianoにおいて部分的な無料カスタマイズを行っているとのこと。

今回特にコロナウィルスの影響の中、沢山のご支援を頂けた事に本当にご縁と感謝を感じており、「紹介した物を販売して終わり」という形を取りたくないなと感じました。
出来る限り使う人それぞれの使い勝手に寄り添った形で、ネットを介してとはいえ人と人として生活に寄り添う革製品を提供したいと思い、無料カスタマイズを企画致しました。

カスタマイズ内容については現在第3弾まで企画されています。
この財布がかっちりフィットする人なら、こうしたカスタマイズも検討した上で、自分に合った理想の財布に挑戦してみてはいかがでしょうか。

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