SYRINXのHitoe Foldを買いました

クラウドファンディングによって記録的な大反響を呼び、現時点で納期約1年待ちとなっているHitoe Foldの2月7日予約販売分を入手しました。

12月11日の第1回、1月21日の第2回先行モニタリング販売では1分足らずで完売するなど、現在最も話題を呼んでいると言っても過言ではないこの財布。
2月7日にあった3度目のチャンスにようやく購入権利をゲットすることができ、先日とうとう管理人の手元に現物が到着しました。

この財布の最大の特徴が、小銭とカードが重ならないよう並行配置する「単(ひとえ)構造」です。
財布が厚みを生む主な原因は重なり合ったカードと小銭で、この2つの収納スペースを分散させることで財布全体の厚みを最小限に抑える仕組みです。

このような「小銭とカードを重ねない構造」はこの財布唯一無二の構造という訳ではなく、他にも同様の特徴を売りにしている財布はいくつかあります。
管理人が所持する財布の中では「アブラサスの薄い財布」「HUKUROのJITAN」「OUT OF ORDINARYのTIME」「エムピウのピアストラ」の4つがありますね。

それでは、このHitoe Foldとそれぞれの財布とは一体何が違うと言うのか。財布としての機能性やサイズ感を確認していきたいと思います。

Hitoe Foldのサイズの比較結果について

「小銭とカードを重ねない構造」を採用したHitoe Foldはどれだけ薄いのか、どれだけコンパクト化に成功しているのか。
まずは数日間使用後のHitoe Foldについてサイズを測定してみました。

短辺の数値は9.0cmを超える大きさとなり、面積から見るとそれほどコンパクトとは言えません。
コインポケットとカードポケットを並行配置する都合上、短辺を小さくまとめるのは物理的に難しいのだと思われます。

特筆すべきなのはマチの薄さで、1.0cmの大台を下回る薄さはさすが。
さらに中身を入れた状態でもマチが1.0cm強に収まるのはすべての財布の中でもトップクラスの数値
中身を入れると厚さ2.0cmを超える財布が市場の多くを占める中で、この薄さこそがやはり最大の魅力と言えるでしょうね。

上記右側の測定画像については、最も厚みが出るであろうコインポケット部分を含めた財布のマチの厚さを測定した数値です。
小銭が入っていない場合は他の部分と厚みは変わらず、小銭が入っている場合は他の部分より3~4mm程度の厚みが増えると考えられます。

製品名測定画像短辺長辺マチ収納時
マチ
面積体積収納時
体積
百円玉
限界容量
SYRINXのHitoe Fold9.39.50.81.188.470.797.243
OUT OF ORDINARYのTIME8.99.50.61.184.650.893.124
アブラサスの薄い財布9.69.80.91.294.184.7112.916
HUKUROのJITAN9.912.10.60.9119.871.9107.838
エムピウのピアストラ10.010.30.91.3103.092.7133.930

サイズを測定した数値について、他の「小銭とカードを重ねない構造」の財布との比較結果を表にしてみました。
マチの薄さは測定誤差を考慮すればどれも似たようなもの。短辺長辺は類似構造の財布の中では小さくまとまっておりコンパクト化に成功していると言えます。

ところで、Hitoe Foldは「厚い革」の「薄い財布」をキャッチフレーズの1つに採用しています。

> 革を薄く漉けば、薄い財布を作ることは簡単です。しかし、薄い革は耐久性が劣り、革本来の風合いも損なわれます。
> 「革を厚革のまま、しかし財布は薄く」この相反する難題に、私たちは挑戦し、到達したのがHITOEです。
> 外装には、革本来の魅力を満喫できる、厚さ約2mmの「元厚(げんあつ)の革」を採用しました。(※内部は1.2mm厚)

という訳で、財布の札室外装に使用されている革1枚の厚みをそれぞれ測定してみました。
確かに2mm厚のスペックを備えた革に偽りはありませんでしたが、アブラサス薄い財布の方がさらに分厚いのは意外でした。

おそらくアブラサスの分厚さは革の中に挿入されている芯材によるもの。(芯材の説明はレザークラフトフェニックスのスタッフブログ参照)
Hitoe Foldの外装は裏張りのない革1枚で作られており芯材が入っていないので、手で握ると財布をぐにゃっと曲げることができます。
これにより財布の特殊な開閉方法を可能としているのがHitoe Foldの大きな特徴でもあるので、その辺をカードポケットの仕組みと一緒に見ていきます。

Hitoe Foldのカードの使い勝手について

カードポケットは1ヶ所のみ。そこに全てのカードを収納する仕組みで6~10枚を重ねて収納可能です。
カード出し入れ口が財布の外側を向いている、アブラサス薄い財布と似たような形になります。

このような場合にカードを多く入れすぎると経年変化により革が伸びてしまい、把持力を失ってカードが零れ落ちやすくなってしまうことがあります。
しかしHitoe Foldは「収納したカードに三角フラップを引っ掛けて財布を閉じる仕組み」になっており、財布を閉じると同時にカードポケットに蓋がされます。
ですから、いくらカードを詰め込んでも革が伸びきってもカードが零れ落ちる心配は全くありません。

ただし三角フラップをカードに引っ掛ける都合上、隙間なくカードを詰め込んでしまうと、三角フラップをカードに引っ掛ける隙間がなくなってしまいます。
三角フラップをストレスなく活用するなら収納カード5枚以下、個人的な感覚では3枚以下に収めるのが使いやすく感じます。

カードポケットはこの1ヶ所しかないので「複数のカードから目的の1枚を出し入れする」場合は、あまり使い勝手が良くなかったりします。
類似構造の財布もそれは同じで、収納できるカード枚数にも大きな差はないようです。

カードポケットの底に開いた穴から指を入れてカードを押し出せないか試してみましたが、ちょっと厳しい感じでした。
カードポケットの出し入れ口が斜めにカットされているので、カードを扇状に広げて目的の1枚を抜き取るのがよさそうです。

Hitoe Foldの財布開閉方法について

それにしてもHitoe Foldは、財布を開いたり閉じたりする所作のギミックがかなり特殊で、他に類を見ません。
少し練習することで、ノールック且つ片手で財布を開閉することができるのはちょっとしたサプライズでした。

動画のように、カードポケットとコインポケットの境目を「くの字」に曲げるワンアクションによって、三角フラップが外れて財布を開くことができます。
財布を閉じるときも同様に「くの字」に曲がるよう握りこみ、三角フラップをカードに引っ掛けることで固定が可能となっています。

これはHitoe Foldの革に芯材が入っていないこと、カードポケットとコインポケットの境目が折れ曲がることによって可能となる離れ業です。

エムピウのピアストラは、カードポケットとコインポケットの境界が折れ曲がるためケツポケに違和感なく収まるという特徴がありました。
Hitoe Foldはその構造をさらに活用し、財布の開閉方法へと昇華させてしまった。これはまさにアイデアの勝利と言えるのではないでしょうか。
ポケット感もかなりイイです!

ただし、紙幣の収まり方によっては財布を開くのはともかく、財布を閉じる所作に支障を生じることもありますので、次はその辺を詳しく見ていきます。

Hitoe Foldの紙幣の使い勝手について

独特の構造を持つHitoe foldですが札室の形は比較的オーソドックス。コインポケットとカードポケットの裏側に紙幣を差し入れる形となります。

少し気になったのが、札室内装の革の床面があまり滑らかではなくて、紙幣を差し入れる際の滑りが悪いところ。
Hitoe Foldにはエルバマットという革が使われているようで、内装には裏張りがされておらず床面がむき出しになっています。
この革の床面があまり磨かれていないため、紙幣を滑り込ませる際に摩擦が生じて若干の引っ掛かりを感じます。


エルバマットという革の特性なのかどうかはよく知らないのですが、他の類似構造を持つアブラサスやTIMEであれば裏張りがされており紙幣の滑りは良好。
裏張りのないピアストラも床面がしっかり磨かれており摩擦が少ないので、紙幣の出し入れにストレスを感じることはありません。
製品によって個体差があるのかもしれませんが、このあたりは多少手間賃をかけてでも改善した方がいいのではないかと思いました。

そして気になったところがもう1点。
Hitoe foldは札室の滑りが悪くて、紙幣を奥の方まで差し込むのに若干の手間がかかると書きましたが…。

この収納した紙幣がきっちり奥まで差し込まれていないと、カードに引っ掛けるための三角フラップを覆ってしまい、蓋としての役割を妨げる場合があります。
特に紙幣の枚数が多かったりサイズの大きい万札があると三角フラップにかぶさりやすく、紙幣が邪魔をしてカードにフラップを引っ掛けることができません。

これを解決するには紙幣をしっかり札室の奥まで差し込むか、三角フラップ内側に紙幣を差し込むか、手の指で紙幣を抑えながら財布を閉じるか、方法は3通り?
ただそうすると紙幣を収納するだけのことに余計な手間がかかってしまい、いちいち紙幣の位置を整えるのを面倒に感じることもありました。

Hitoe Foldの小銭の使い勝手について

コインポケットについてはカードポケットと並行配置する都合上、奥行きが少なく、かなり浅い形状。
それでもポケット部分の革にあそびがあるせいか、このタイプのコインポケットにしては余裕があり、かなり使いやすいと感じます。

まずは先に比較対象となる、他の類似構造を持つ財布のコインポケットを見てみます。

このタイプのコインポケットは開口部が狭く、小銭の視認性に優れている反面、小銭を収納するときの入れにくさ零しやすさがネックとなっていました。
ですがHitoe Foldは革のあそびがある分、比較的開口部がガバッと開くので他の類似財布とは異なる小銭の入れやすさを体感できます。

もちろんオーソドックスなコインポケットと比べると開口部は狭く、小銭を入れにくいのは否めませんが、個人的にはHitoe Foldは許容範囲。
短所を補って余りあるだけのマチの薄さに寄与しつつ、小銭の視認性を備えたこの小さなコインポケットには製作者の試行錯誤が感じられます。

コインポケットの蓋の役割を果たすフラップのサイズも絶妙。ポケットを上から覆ったりして革が重なることがないので財布の厚みには影響がありません。
コインポケットにファスナーやバネホックなどの留め具が無くとも、財布を閉じた状態であれば激しく振っても小銭が零れる危険性は全くなし!
財布を開いた状態であれば、逆さに傾けることで小銭をこぼすリスクは当然あると言えばあります。

しかしHitoe Fold独特の財布開閉方法により、手のポジショニングをきっちり行っていれば小銭が落下する心配はさほどありません。
折りたたまれた札室や紙幣によりフラップが押さえつけられる仕組みになっているので、コインポケット開口部が下を向いても自動的に蓋がされるのです。

このコインポケットは収納量も比較的多く、最大40枚の百円玉を収納することができました。
下記画像のように百円玉を縦にして並べても収納可能なのは他の類似構造の財布にはなく、少ない小銭収納枚数だとかなりの余裕が感じられます。

なおこの財布のおまけ要素として、コインポケットに小銭を入れた状態で財布を振ることにより、中の小銭がきれいに揃うといった特典があるようです。
実際にやってみたところ、小銭の収納容量に余裕がある状態であれば綺麗に小銭を揃えることができました。

ちなみに他の類似構造の財布についても同様にチャレンジしてみた結果、いずれも小銭をきれいに揃えることができました。

つまり底の浅いコインポケットであれば、どの財布でも同様に小銭を整列させることができるようですね。
その中でもHitoe Foldは小銭の収納容量に比較的余裕があるので、それなりに多くの小銭を入れても小銭が整列しやすいということみたいです。

似た構造の財布と比べて、使ってて窮屈さを感じさせない面白い財布だと思いました

縦横のサイズはそこそこに、突出した薄さを備えたコンパクト財布。それでいて機能性を犠牲にしないので「薄いけど使いにくい財布」とは一線を画しています。
決して「非常に使いやすい財布」と言うほどではありませんが、類似構造を持つ他の財布と比べて、機能面での上位互換的な要素を多数実現。
初見で興味を惹かれる独自のギミックも満載で、且つ、そのギミックがしっかり実用性に結びついているおかげで持ち主を飽きさせない魅力があると感じました。

ただ、個人的な好みとしては財布の外装がシンプルに過ぎるのと、革が柔らかくグニャっと曲がるせいかイマイチ高級感に欠けると感じるところも。
財布を開いた状態でザラッとした床面が丸見えになるのも気になる部分で、人によってはフォーマルな場で使うのは憚られるかもしれません。
管理人はよく言われる「コバの磨かれ方」なんかには無頓着な方ですが、財布を側面から見た絵があまり美しくはないなと感じてしまいました。

それに外装がシンプル過ぎるのは、財布の表裏がパッと見で区別がつきにくいというデメリットもあります。(下記画像の左が表で右が裏)
財布を開こうとしたのに表裏を間違って上手く開くことができず、財布を引っ繰り返してちゃんと開き直すというアクションを度々経験することに。

あと気になるのは三角フラップの耐久性ですね。特許出願のフラップ構造はオリジナリティが高すぎるおかげで長年の酷使に耐えうるかは未だ未知数。
乱雑にカードへ引っ掛けたりして最も負担がかかる部分ですので、年単位のエイジングを経てどのような格好に変貌を遂げるかで真価を問われそうです。
素材のバリエーションを広げる意味でも、部位ごとに別々の色や革を使ったHitoe Foldがあっても面白いかもしれません。(素人意見です)

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