理 kotowari miniを買いました

クラウドファンディングを通じて昨年夏ごろに発売された「理 kotowari mini」という財布を入手しました。

これもまた小銭とカードを重ねない(重なりにくい)構造を採用しており、その他にも独自の創意工夫を多数詰め込んだ非常に個性的な財布。
前作である「理 kotowari® zero」を進化させたこの財布、紹介記事を見た当初は正直なところ「前作と変わり映えしない財布かも」と良い印象がありませんでした。

しかし今作を実際に触ってみると多くの部分に改良が施されており、前作とは全くの別物となっていることに気づかされました。
見る目のない先入観でネガティブな感想を先行させていたことを謝らなければなりません。

さて、類似構造を採用した財布の大抵がカードポケットを含む部分よりもコインポケットを含む部分が分厚くなるのに対し、この財布は凹凸なくほぼ平坦。
そして下記一覧表から比較すると縦横面積は平均より小さな数値、厚みはそこそこ大きな数値になることが分かります。

製品名測定画像短辺長辺マチ収納時
マチ
面積体積収納時
体積
百円玉
限界容量
革のある暮らしの理 kotowari mini(栃木レザー)8.89.31.31.681.8106.3130.937
SYRINXのHitoe Fold9.39.50.81.188.470.797.243
GANZOのミニマムウォレット8.99.20.91.381.973.7106.516
アブラサスの薄い財布9.69.80.91.294.184.7112.916
artigianoのusuha8.88.90.81.278.362.694.023
artigianoのusuha28.99.01.01.380.180.1104.118
com-onoのSLIM-005JA9.19.32.02.284.6169.2186.124
OUT OF ORDINARYのTIME8.99.50.61.184.650.893.124
HUKUROのJITAN9.912.10.60.9119.871.9107.838
sonataのCATAe9.09.21.01.782.882.8140.866
エムピウのピアストラ10.010.30.91.3103.092.7133.930

「マチ厚1cmの壁」を越えたスリム特化の財布と比べると、薄さはやや物足りないスペックですね。

それでも普通の2つ折り財布と比べれば中身が入ってもスリムな傾向にあり、収納時でも厚み2cmを超えないのはこの構造の成せる技でしょう。
結構なコンパクト感を備えた本作には多くのオリジナルギミックが備わっていますので、それぞれがいかなる機能性を発揮しているのか見ていこうと思います。

札室の機能性について

札室は一般的な2つ折り財布と同じ形で使いやすいです。
変な癖もなく十分な幅があるので紙幣の出し入れもしやすいですね。

ごく普通に使いやすくて特筆すべき事項はありません。

カードポケットの機能性について

カードポケットは1箇所のみ。全てのカードを重ねて1箇所にまとめて入れるタイプです。

収納した状態でカードの上端が微妙に財布からはみ出るよう切込みが設計されています。
カードを下から押し出したり、指を引っかけて取り出しやすくなるよう配慮のある工夫ですね。

収納は概ね最大6枚程度まで。カードポケットは1箇所に多くの枚数を収納するため把持力は緩めです。
この類のポケットは留め具がない状態で財布を扱う際に、財布を傾けると不意にカードをこぼしてしまリスクがあるので一応注意。

そのカードポケットにしっかり蓋をしてくれる留め具が、この財布の独自要素の1つであるコーナーストラップです。

コーナーストラップの機能性について

この財布に備わったギミックは非常にオリジナリティが高く、分かりやすく説明できるだけの文章力が管理人にはありません。
よってMakuakeの商品ページから画像などを引用させていただきます。


特許申請の最大のポイントである『コーナーストラップ』
たった一本の直線ストラップを財布の右隅に絶妙に配置して、そこに財布のフラップを通せば、

・カードが飛び出ない(カードケースのフタになる)
・財布がパカパカ開かない(財布のフラップを押さえる)

役割を担います。

オリジナルギミックのコーナーストラップは、カードポケットの開口部を覆って蓋をしつつ、財布を閉じた状態で固定する役割を果たします。
このように財布を閉じた状態では、ストラップが蓋の役割を果たすのでカードがこぼれることはありません。

こうした働きを担う財布の部位を、一般的に留め具と呼びます。

他の財布では留め具にバネホックやファスナーが用いられるのが一般的。
それら「財布を閉じた状態で固定するための留め具」と比較して、コーナーストラップにメリットデメリットは有るのか無いのか、少し考えてみました。

コーナーストラップとバネホック、ファスナーとの比較

バネホック
・財布を閉じる際に凹凸を合わせる手間が生じる。財布を開ける際の手間はほとんどない。
・ホック部分のみ局所的に厚みが増すが、全体の厚みへの影響はあまりない。
・見た目への影響はワンポイントのアクセント程度で、ほとんどない。
ファスナー
・開閉の際に、ファスナーを動かす分だけ若干の手間が生じる。
・Lファスであれば2辺、三方ファスナーであれば3辺に渡ってファスナーを動かす手間がかかる。
・この開閉動作を好む人もいれば、ファスナー金属部分に指が触れるのを不快に感じる人も。
・ファスナーテープによっては部分的に厚みが出るかもしれないが、全体の厚みへの影響はほぼない。
・人によってはファスナーの外観に好き嫌いがあるかも。(昔は女性的なイメージもあった。)
コーナーストラップ
・財布を開く際は、中央より左側を傾けてストラップから抜き取るだけで、手間はほぼかからない。
・財布を閉じる際には、中央より左側を傾けてストラップに差し込むのが手間に感じる。
・ストラップの革の分だけ部分的に出っ張るが、全体の厚みへの影響はほぼない。
・一見して非常に目立つので、そのビジュアルに大きく影響を及ぼす。

コーナーストラップは財布全体の留め具、カードポケットの留め具と2つの役割を果たします。
しかしそれはファスナーも同じで、むしろコインポケットの留め具を兼ねない分だけファスナーには劣るかも。

こう比較してみると、コーナーストラップが他の留め具よりも特別優れたポイントはなさそうに思えます。
特に、ストラップに差し込んで財布を閉じるアクションは独特のコツがいるので苦手に感じる人もいるでしょう。

管理人個人の感想としては、そのままストラップに差し込もうとしても引っ掛かってスムーズに差し込めない場合が多々あり。
カード収納枚数が多い場合なんかは、先に指をストラップに引っ掛けて、ストラップの輪を大きく広げてから差し込む必要を感じました。
2~3ヶ月程度の使用期間では、ストラップへの差し込みがスムーズに行えるほどの「癖付け」はできませんでした。

他の留め具との最大の違いはやはりそのビジュアルに与える影響で、個人的にはこのストラップの見映えはあまり好みではありません。
しかし、シリーズ新作【理 kotowari® μ】ではストラップのバリエーションアップによって新たな魅力の獲得に成功している模様です。
以下のyoutube動画で分かりやすく解説がされていますね。

気に入りました👍ミニマル財布のマイベスト更新!シンプルかつエレガントで多機能なkotowari μ(コトワリミュー)を紹介します。

また留め具としてのコーナーストラップを補強するために、スライドロック構造というアイデアが採用されているようです。


『コーナーストラップ』を補う『スライドロック構造』

「革の段差」と「コーナーストラップの締め付け」を利用した『スライドロック構造』が財布のフラップがずれることを防いでくれます。
そして、スライドロックは財布を開く際に財布フラップを少し傾くよう引き抜けば簡単に解除できます。

『コーナーストラップ』と『スライドロック構造』で、全く新しいミニ財布の使いやすさを実現できました。

『コーナーストラップ』と『スライドロック構造』は特許出願のポイントとなっています。

革の凹凸部分をパズルのように重ね合わせて財布の固定状態のずれを防ぐ、とありますね。
しかし実際に凹凸を重ね合わせてみても、その凹凸の段差が微少であるため、ちょっと力を加えると容易に財布がずれてしまうことが確認できます。

このスライドロック構造についてはその恩恵をはっきりと感じ取ることができませんでした。
このあたりについてはメンズ財布レビュー動画チャンネルの動画でも指摘があります。

実際に凹凸がない状態の財布と比較することができれば、全く違う感想になるのかな?

コインポケットの機能性について

財布内装へ斜めに取り付けられたファスナー型コインポケットは中々他に見ない形。
このコインポケットの財布中央側には袋状に縫い込まれたスペースが設けられており、これが使いやすさに大きく寄与する工夫となっています。

この装置の名称は「G-MOVE」と呼ばれているそうで、管理人は同様の工夫がある財布を他に見たことがありません。


コインケースは上図のように『新発想の構造(※)』でカードとコインの重なりを無理なく解消し、財布の薄さを実現しました。

※ 財布の下方向に『空き』を作り、そこに一枚革を折りたたみ、その端部から10mm離れた位置から縫い始めることでコインを入れた際に自然にコインケース下部がふくらむようにすることで『空き』を埋め、さらに財布の折り目でコインケース端部が押されることでふくらみが大きくなり収納力がアップする構造

「G-MOVE」による袋状の膨らみ部分には、見た目以上の収納力が備わっており、省スペースながら最大37枚の百円玉を収めることができました。
また引用画像のとおりに、この膨らみ部分に小銭をまとめて収めることで、カードポケット部分との重なりを回避できる寸法ともなっています。

そうすることで小銭とカードが重ならずに、財布全体を薄く保ちつつ、小銭の収納量にも余裕を持たせることができる。
本当に新しい発想だと思います…!

ただこれは「小銭とカードが重ならない構造」と言っても重なりを完全に回避するものではなく、小銭の収納状態によってはカードとの重なりは回避できません。
中の小銭が適量(10枚程度)を超えてしまうと、膨らみ部分のみに小銭を収めることができなくなります。

そうなるとコインポケット全体に小銭が散らばってしまい、袋状のあそびもマチもない狭いスペースに小銭が入り込んでしまう。
狭い場所からの小銭の出し入れは当然やりにくくなって使い勝手を大きく損ないます。
最大37枚収納可能といっても、適量(10枚程度)を超える小銭を持ち運ぶには向かない財布と言えるかもしれません。

そしてもう1点言及しておきたいのが斜めファスナーによるコインポケット開口部について。
よくある片マチファスナー型とは違い、ファスナーを斜めに開け閉めするコインポケットは他にあまり見ることがないですね。

左手に財布を持った状態で、右手でファスナーのスライダーをつまんで引っ張り上下させる動作、これ自体に大きな癖はありませんが…。
問題はその開口部の狭さにあります。

この斜めファスナー開口部は極端に狭いとも言えませんが、十分に広いとも言いがたい大きさ。
小銭の出し入れは決してしやすいとは言えず、指で開口部をしっかり広げる動作が必要です。

開口部を広げて小銭を右手で出し入れするには、左手で開口部を広げる動作がほぼ必須になります。
左手は財布を持って固定する役割を同時にこなす必要があり、またファスナーが斜めに取り付けられた位置関係から、微妙にいびつな財布の持ち方が要求されます。
(財布を固定しつつファスナー開口部を斜めに広げるので、財布全体が斜めにグニャっと曲がる感じに。)
また、開口部を広げる際にはファスナーのギザギザ金属部分にどうしても指が触れてしまうので、これを不快に感じる人もいるかもしれません。

そして、ファスナーを開けて開口部を大きく広げても、中が見やすいかというとそうでもありません。
このファスナーは中央対角線状に配置されている関係で、小銭の入れ方によってはファスナーの上下左右に小銭が散らばってしまいます。

だからこそ、引用した使用方法の説明どおりにコインポケット袋状部分を下に向けて、重力(G-MOVE)によって小銭の収納位置を調整することになる訳ですが…。
そのために財布の向きを地面と平行(横倒し)にしてしまうと、カードポケットからカードがこぼれ落ちてしまうことがあるのです!

コインポケットを開いているときは当然コーナーストラップによる留め具は外れており、カードポケットの開口部はがら空き。
カードポケットの把持力はゆるゆるなので、財布を横倒しにしてしまうと、いとも簡単にカードが抜け落ちてしまうのです。

もちろんこれは、管理人のようにカード収納枚数が少ない場合の話。カードを4枚以上持ち歩く人なら軽く財布を振っても抜け落ちることはないでしょうが…。
所有カードが3枚以下の人は財布の取扱いに十分注意すべし。カードを落とさないように、かつ、小銭の収納位置を調整するのは難易度が高めですね。

カードを落とさないことを優先して財布を縦持ちすると、コインポケットのマチのない部分に小銭が溜まって出し入れがしづらくなる。
これらの動作をスムーズにこなせる器用さがなければ、ストレスなくこの財布を扱うのは難しいかもしれません。

新発想のアイデアは評価されるべきだけど、その反面小銭の扱いに癖があるという短所も。

他の財布では見ることのない数多の工夫が凝らされたこの財布。
やや尖った外観、ややコンパクトなサイズ感を保ちながらにして、平均的な使い勝手を備えることに成功したように思います。

サイズも機能性もその一点で優れた財布には及ばないものの、高いレベルでバランスの取れた財布。
コーナーストラップと小銭の取り扱いに強い癖があるので、人を選んでしまう財布なのが惜しい点ですね。

シリーズ後継作となる【理 kotowari® μ】ではサイズアップと引き換えに札室とカードポケットに若干の改良が加えられ、革素材の変更により高級感がアップ!
さらにはストラップの着せ替えバリエーションによって一層洗練されたビジュアルを獲得しているので、今からの購入ならそちらがお勧め。

繰り返しますが独自色の強い財布だけに使い方には癖があるので、人によっては合う合わないがあると思います。
購入前に現物を手にとって使い勝手を確かめられる機会があれば嬉しいところですね。

この製作者が編み出した「G-MOVE」に関するアイデアは、他の財布メーカーも見習って良いところを取り入れてほしいなあと考えさせられました。

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